海外で暮らしていると、分からないことや困ったことに出会う場面がある。
生活の手続き、地域の習慣、近所との付き合い、学校のこと。日本であれば、これまでの経験や身近な人から得た知識で対応できることでも、海外では何を誰に聞けばよいのかさえ分からないことがある。
そんなとき、頼りになるのは制度や情報だけではない。現地の事情を知っている人や、日頃から付き合いのある人との関係が、生活を支えてくれることがある。
私自身、ドゥマゲッティに来たばかりのころは、現地のことが何も分からなかった。しかし、妻が現地の言葉を話せたこともあり、近隣の人たちと親しくなりながら、生活に必要なことを少しずつ教えてもらってきた。
今振り返ると、妻がいなければ、私は今ここで暮らしていなかったかもしれない。
初めての土地では、身近な人の存在が大きい
ドゥマゲッティに移ってきた当初、私は地域の事情も、日常生活の細かなルールも、ほとんど知らなかった。
現地の言葉を自由に使えるわけでもなく、何か分からないことがあっても、誰に聞けばよいのか分からない。海外生活では、こうした小さな分からなさが積み重なる。
その点、妻は現地の言葉を話せる。近隣の人たちとも自然に付き合い、生活の中で分からないことがあれば教えてもらえる関係を築いてきた。
私が一人で情報を集めていたら、もっと時間がかかっていたことも多いだろう。
もちろん、現地の人と知り合いになれば、すべてが解決するわけではない。それでも、困ったときに事情を聞ける相手がいることは、海外で暮らすうえで大きな安心につながる。
長く暮らすうちに、自分たちも相談される側になった
ドゥマゲッティでの生活も、気がつけば七年ほどになる。
最初は何も分からなかった私たちも、今では妻を中心に知り合いが増え、分からないことがあれば親切に教えてもらえるようになった。
そして、私たちの後からドゥマゲッティに移住してきた日本人から、相談を受けることもある。
自分たちが初めて来たころには分からなかったことを、今度は新しく来た人に伝える。そうした関係が自然に生まれてきた。
相談される内容の多くは、妻が現地の人たちとの間に築いてきた関係を通じて対応できている。
ここで重要なのは、特別な人脈を持っているということではない。毎日の生活の中で近隣の人たちと付き合い、分からないことを教えてもらい、少しずつ関係を築いてきたということだ。
海外生活の安心感は、移住した時点ですぐに手に入るものではない。暮らしながら育っていくものでもある。
日本人の知り合いがいると、安心できることもある
現地の人とのつながりは大切だが、可能であれば、ドゥマゲッティで暮らす日本人とも知り合っておくと安心できると思う。
同じ地域で生活している日本人であれば、現地での暮らしについて、実際の経験をもとに話ができる。自分が困っていることを理解してもらいやすい場面もあるだろう。
特に、移住したばかりのころは、何が分からないのかさえ整理できていないことがある。そんなとき、少し先に暮らし始めた人の経験が参考になることもある。
ただし、日本人であれば誰でも気が合うとは限らない。
同じ日本語を話し、日本の文化を共有していても、考え方や人付き合いの感覚は人それぞれだ。海外に住んでいるという共通点だけで、無理に親しくなる必要はない。

日本人コミュニティーに無理に参加する必要はない
マニラなどでは、日本人同士のコミュニティーが形成されていることもある。そうしたつながりが役立つ人もいるだろう。
一方で、私自身は、日本人同士の付き合いの中で余計な気を使ったり、いわゆる「マウント」を取られるように感じたりした経験もある。
海外に来たのだから、日本人同士で助け合わなければならない。日本人の知り合いをたくさん作っておいたほうがよい。そう考える必要はないと思う。
人間関係は、数が多ければよいというものでもない。
付き合いを維持するために気を使い、自分の考えを抑え、疲れてしまうのであれば、本来の目的である安心した生活から離れてしまう。
私としては、無理に大きなコミュニティーに入るよりも、価値観の合う人と少数でも知り合っておくことから始めれば十分だと思う。
もちろん、これは私自身の経験から感じていることであり、日本人コミュニティーそのものを否定するつもりはない。自分に合うつながり方を選べばよいということだ。
人の話は参考にする。でも、すべてを鵜呑みにしない
現地の人や長く住んでいる日本人から話を聞けることは、大きな助けになる。
ただし、誰かが教えてくれたことが、いつでも正しいとは限らない。
その人が経験した範囲では正しくても、別の地域では事情が違うこともある。以前はそうだったけれど、今は制度や状況が変わっていることもある。
親切に教えてくれた人の話であっても、必要に応じて別の人に確認したり、正式な手続きについては担当機関に問い合わせたりすることが大切だ。
人間関係を頼ることと、自分で判断することは、矛盾しない。
むしろ、複数の人から話を聞き、必要なところは確認しながら、自分たちに合った方法を選んでいく。それが海外生活を続けるうえで現実的なやり方だと思う。
頼ることと、依存することは違う
海外で暮らすとき、人に頼ることは決して悪いことではない。
自分が知らないことを知っている人に聞く。困ったときに助けてもらう。そして、自分にできることがあれば、今度は誰かの相談に乗る。
そうした関係が少しずつできていけば、暮らしやすさも変わってくる。
ただし、何でも誰かに任せてしまうのとは違う。人に助けてもらいながら、自分たちでも必要なことを理解し、判断できるようになっていくことが大切だ。
私たちの場合、ドゥマゲッティでの生活を支えてきたのは、妻が築いてきた現地の人たちとの関係だった。そして、長く暮らすうちに、私たちも新しく移住してきた日本人の相談に乗るようになった。
最初は助けてもらう側だった人間が、いつの間にか、誰かを助ける側にもなっている。
海外生活における人間関係は、一方的に助けてもらうためのものではない。暮らしの中で少しずつ育ち、必要なときに支え合える関係なのだと思う。
大切なのは、無理なく頼れる相手がいること
海外生活で困ったとき、頼れる相手がいるかどうかは大きい。
その相手は、現地の友人かもしれない。家族や近隣の人かもしれない。同じ地域に暮らす日本人かもしれない。
大切なのは、誰とでも付き合うことでも、大きな人脈を作ることでもない。自分が安心して相談でき、相手のことも信頼できる関係を少しずつ築いておくことだ。
私の場合、妻が現地の人たちとのつながりを作ってくれたことが、ドゥマゲッティで暮らし続けられた大きな理由の一つになっている。
もし、これからドゥマゲッティへの移住を考えている人がいるなら、最初から多くの知り合いを作ろうとしなくてもよいと思う。
まずは、現地の事情を教えてくれる人と知り合うこと。そして、価値観の合う日本人がいれば、少しずつ付き合ってみること。
無理をせず、自分に合った人間関係を育てていく。それが、海外生活を長く続けるための一つの現実的な方法ではないだろうか。
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