海外で仕事をつくろうと思ったとき、最初に考えるべきことは何か

フィリピンの海辺のカフェテーブルに置かれたノートパソコンと事業計画のノート、海外で仕事を始める前の準備をイメージした風景 仕事と小さなビジネス

はじめに:海外で仕事を始めることは、場所を変えるだけではない

海外で仕事を始めようと考えたとき、最初に思い浮かぶのは「何をすれば収入を得られるだろうか」ということかもしれません。

日本で経験してきた仕事を海外でも続ける。現地の物価や人件費を活用する。日本では難しかった小さな商売に挑戦してみる。

海外には、日本とは違う可能性があります。

しかし、実際に海外で仕事を始めてみると、商品やサービスそのもの以外にも、考えておかなければならないことが数多くあると気づきます。

お客さんは誰なのか。商品をどのような条件で仕入れられるのか。品質に問題があった場合はどうするのか。契約や支払いの約束は守られるのか。困ったときに誰に相談できるのか。

日本では当たり前だと思っていたことが、海外ではそのまま通用するとは限りません。

私自身、フィリピンで仕事を始めた当初、こうした確認が十分ではありませんでした。

今回は、海外で小さな仕事をつくろうとするとき、始める前に何を考え、何を確認しておくべきなのか。実際の経験を交えながら整理してみたいと思います。

1. 日本で知っている成功モデルは、海外でも通用するのか

私は日本で仕事をしていた頃、すでに成功している商売の仕組みを調べ、それを参考にして自分でも再現するという考え方を持っていました。

うまくいっている事業には、何らかの理由があります。

商品、販売方法、仕入れ先、価格設定、顧客との関係。そうした仕組みを理解し、自分の仕事に取り入れていくことは、事業を始めるうえで一つの方法だと思います。

2012年にフィリピンへ移住したときも、私は同じ考え方を持っていました。

日本で経験してきたことを活かせば、フィリピンでも何かできるのではないか。日本で成立している商売の仕組みを、こちらの環境に合わせれば仕事になるのではないか。

そう考えていました。

しかし、後になって分かったのは、成功している商売には、その場所だからこそ成立している条件があるということです。

仕入れ先、品質管理、物流、商習慣、顧客の購買力、人との約束の考え方。

表面に見える商売の形だけを真似しても、その裏側にある条件まで同じとは限りません。

海外で仕事を始めるなら、まず自分が知っている成功モデルを一度疑ってみる必要があります。

その仕組みは、今いる場所でも成立するのか。

何が同じで、何が違うのか。

そこを確認することが、最初の一歩になると思います。

2. 安いことと、事業として有利なことは違う

私がフィリピンで最初に取り組んだ仕事の一つに、パソコン用の外付けハードディスクなどの周辺機器を仕入れ、日本へ輸出するというものがありました。

マニラのディビソリアで商品を仕入れ、日本で販売することを考えていました。

当時の私は、仕入れ価格の安さに目を向けていました。

日本で購入するより安く仕入れられるのであれば、そこに利益を生み出せる可能性がある。そう考えたのです。

ところが、実際に仕入れたハードディスクは、すべて不良品でした。

販売した相手に返品や交換を求めましたが、応じてもらえませんでした。

結果として、約5万ペソの損失を出すことになりました。

今振り返れば、これは仕入れ価格だけを見て、商品の品質や取引条件を十分に確認していなかったことが原因でした。

安く仕入れられることと、安定して利益を出せることは別の話です。

商品が正常に使えるのか。購入前に確認できるのか。不良品があった場合、返品や交換はできるのか。取引相手はどのような対応をしてくれるのか。

こうした条件を確認しないまま仕入れてしまえば、安く買えたとしても、事業としては成立しません。

これは商品に限った話ではありません。

人件費が安い、家賃が安い、材料費が安いという理由だけで、事業が有利になるとは限らないのです。

大切なのは、目に見える安さだけで判断せず、その裏側にある条件まで確認することだと思います。

海外で事業を行う際に考えておきたいリスクについては、フィリピンで事業を行う際に考えておきたいリスクでも整理しています。

3. 誰が顧客で、何を必要としているのか

仕事を始める前に、もう一つ考えておきたいことがあります。

それは、自分が提供しようとしている商品やサービスを、誰が必要としているのかということです。

自分が良いと思うものと、誰かがお金を払ってでも欲しいと思うものは、必ずしも同じではありません。

たとえば、自分の得意なことを活かしてサービスを始めようとしても、そのサービスを必要としている人がいなければ、仕事にはなりません。

また、必要としている人がいたとしても、すでに他の選択肢があるかもしれません。

その中で、なぜ自分の商品やサービスを選んでもらえるのでしょうか。

始める前に、次のようなことを考えておく必要があります。

  • 誰に向けた商品・サービスなのか
  • その人は何に困っているのか
  • 現在はどのような方法で問題を解決しているのか
  • 自分の商品・サービスを選ぶ理由はあるのか
  • その人は実際にお金を払ってくれるのか

特に海外では、日本人向けなのか、現地の人向けなのか、外国人居住者向けなのかによって、必要とされるものも価格の感覚も変わってきます。

「自分ができること」から考えるだけでなく、「誰かが必要としていること」から考える。

この視点を持っておくことが重要だと思います。

フィリピンの海辺のテラスに置かれたノートパソコン、コーヒーカップ、開いたノートとペン。海外で仕事を考える時間をイメージした風景。

4. 海外で仕事を始める前に確認しておきたいこと

海外で仕事を始める前には、少なくとも次のような項目を確認しておきたいところです。

商品やサービスについて

  • 商品の品質や性能を確認できるか
  • 継続して仕入れられるのか
  • 不良品や問題が発生した場合、どう対応するのか
  • 提供するサービスの内容と範囲は明確か

お金について

  • 初期費用はいくら必要なのか
  • 毎月どの程度の固定費がかかるのか
  • 売上が発生するまで、どのくらいの資金が必要か
  • 想定より売れなかった場合、どこまで損失を許容できるか

取引条件について

  • 支払い方法や支払い時期は明確か
  • 返品や交換の条件は確認できているか
  • 口約束だけで進めていないか
  • 重要な約束を記録として残しているか

現地の環境について

  • 必要な許可や手続きは何か
  • その仕事を行う場所に問題はないか
  • 現地の商習慣や人間関係について理解しているか
  • 困ったときに相談できる人がいるか

もちろん、すべてを事前に完璧に調べることは難しいでしょう。

しかし、最初に確認できることを確認せずに進めるのと、確認したうえで小さく始めるのとでは、その後の結果が大きく違ってくると思います。

特に、後から取り返すことが難しい支出や契約については、慎重に確認しておく必要があります。

事業を続けるうえで重要になる資金の流れについては、小さなビジネスの資金繰りの記事も参考になります。

5. 自分の知らないことを、誰に聞くのか

海外で仕事を始めるとき、自分だけで判断しようとしないことも大切です。

自分が日本で経験してきたことは、もちろん役に立ちます。

しかし、現地の事情については、自分より詳しい人が必ずいます。

現地で長く商売をしている人、行政手続きに詳しい人、法律や会計の専門家、実際に同じ仕事を経験した人。

そうした人たちから話を聞くことで、自分では気づかなかった問題が見えてくることがあります。

ただし、人から聞いた情報をそのまま信じればよいというわけでもありません。

人によって経験も立場も違います。同じ出来事でも、見方が異なることがあります。

一人の話だけで判断せず、必要に応じて複数の人に確認する。重要なことは、専門家や公的な情報でも確かめる。

そして、自分とは違う意見を聞いたときに、すぐに否定しないことです。

自分が知らないことを知っている人の意見には、耳を傾ける価値があります。

海外で仕事をするうえでは、何でも自分で判断できることよりも、自分に分からないことを理解し、適切な人に相談できることの方が大切なのかもしれません。

6. 準備だけで終わらせない。まずは小さく試してみる

ここまで読むと、海外で仕事を始めるには、かなり多くの準備が必要だと感じるかもしれません。

確かに、事前の確認は大切です。

しかし、すべてを調べ終わるまで動かないというのも、現実的ではありません。

実際に始めてみなければ分からないこともあります。

お客さんの反応、商品の売れ行き、サービスへの評価、現地の人との仕事の進め方。こうしたことは、実際に動いて初めて見えてくる部分があります。

だからこそ、最初から大きく始める必要はないと思います。

まずは小さく試してみる。

少量だけ仕入れて反応を見る。限定した範囲でサービスを提供する。大きな設備投資をする前に、需要があるかを確かめる。

そうすれば、うまくいかなかった場合でも、損失を抑えながら次の判断につなげることができます。

もちろん、小さく始めても失敗することはあります。

しかし、失敗したときに何が原因だったのかを考え、次の行動に活かせることが重要です。

準備は必要です。ただし、準備だけで終わらせる必要もありません。

確認できることは確認し、分からないことは小さく試してみる。

その繰り返しが、海外で仕事をつくっていく現実的な方法なのだと思います。

初期投資を抑えて事業を始める考え方については、少ない資金で小さなビジネスを始める方法でも紹介しています。

7. 正解を待つより、現実から学ぶ

海外で仕事を始める前に、すべての答えを知ることはできません。

どれだけ準備しても、予想していなかった問題は起こります。

私自身、フィリピンで仕事を始めた経験を通じて、事前に確認しておくべきことの多さを学びました。

当時は、もっと早く気づいていればと思うこともありました。

しかし、経験して初めて分かったこともあります。

大切なのは、失敗を恐れて何もしないことでも、勢いだけで始めてしまうことでもありません。

自分が知らないことを認めること。人の意見を聞くこと。確認できる条件を確認すること。そして、取り返しのつかないリスクを避けながら、小さく行動してみることです。

海外で仕事をつくるということは、単に日本の仕事を別の国へ持っていくことではありません。

その場所の環境を知り、自分のやり方を見直しながら、少しずつ仕事の形をつくっていくことなのだと思います。

最初から正解を求めるのではなく、現実から学びながら進んでいく。

それが、海外で小さく仕事を始めるときの基本姿勢ではないでしょうか。

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